ちゃんみなバカ日誌11
柔らかな春の風が
花房を掠めると
ひらりと花弁が舞い落ちた。
窓から見える満開の桜。
華やかで。
はかなくて。
どこか寂しげで。
まるであの人みたいだ。
~あなたを想う夜~
キュヒョンの姉さんの挙式に出席する、と言う理由で、僕は休みを貰った。
ツアーはラスト2日を残すだけとなり、その前にスタッフみんなで沖縄へ行った事以外では、雑誌取材等、細かな仕事が沢山詰め込まれていたそんな中。
どうしても出席したかった親友の祝事。
強行な日程にはため息が出そうになったけれど、何とか時間を作れた事に安堵して、僕は久しぶりに母国の空港へと足を下ろした。
僕はその足で急ぎユノヒョンのマンションに向かう。
正面エントランスとは間逆にある裏口駐車場から入って、来客用駐車場に車を止めると、すぐそばにあるエレベーターに乗りこんだ。
今回の帰国日程に、どうしても入れたかった予定。
それは彼に会うこと。
入隊を控え、イベントやファンミ、レコーディングと僕ら以上に超絶スケジュールをこなしている彼に。
今日この日も、夜はライブの予定が入っているのは知っていた。
だけど、時間と言うものは、お互い会うと決めたら時間なんてどうにでもなるもんだと僕は思っている。
大切に思う相手であれば尚更。
エレベーターに乗りながら、ふと考える。
ユノヒョン、日本へと発つ前に、部屋を片付けて出て来ただろうか。
正直、帰国早々、きったない部屋を見て、いやな気分にはなりたくないからなぁ。
部屋の事を思うと、僕は少しげんなりした。
あのユノヒョンのちらかしっぷり。
気分を害さない人なんているんだろうか。
だとしたら彼しか浮かばない。
もし、すでに彼が来ていたら・・・
部屋は綺麗に片付いているな、と思った。
彼が来ると、訳の解らない散らかし方をしたヒョンの部屋が、あっという間にホテルの様に小奇麗な部屋となる。
今はまだ片付けていないとしても。
彼は必ず片付けて行くと思う。
日本でのラストライブを終え、くたくたで帰国するユノヒョンを自分が迎える事が出来ないと知っているから。
せめて部屋だけは、自分がいる時のようにしていこうと。
彼ならそう思っている気がした。
ヒョン家のドアに手をかけると、何の反発もなく、すんなりと扉が開いた事に僕は驚いて、ゆっくりとドアを開け、中を覗き込んだ。
一歩中に入ると、僕の足元にコツンと当たったのは、彼の靴。
後ろ手でカチャリ鍵を閉めると、僕は靴を脱いでリビングへと向かう。
足音が聞こえたのか、廊下途中で「ちゃんみな?」と僕を呼ぶ声がした。
少し開いていたリビングのドア。
取っ手ではなく、隙間に手を入れて開けると。
そこに彼が居た。
「おかえりー。」
見慣れたエプロン姿。
菜ばしを握り、僕が入ってくるであろうドアの方へと笑顔を向けて。
「鍵、開けっ放しでしたよ。危ないじゃないですか・・・・ただいま。」
ユノヒョンの家の鍵をコトンと食卓の上に置くと、僕はコートを脱ぎ、椅子の背にかけた。
座椅子部分にカバンを置き、隣の空いている椅子を引いて腰を掛ける。
目の前の食卓には、パッキングされたおかずと、これからパッキングされるであろう作られたばかりの品が数点。
部屋は。
綺麗に片付いていた。
彼がドラマの撮影で忙しかった頃、ユノヒョンはいつもの手料理が食べられず、コンビニご飯やら外食生活で、あっという間に体重が増えた。きっと栄養も偏っていたと思う。
彼はその事を気にしていた。
日本のファンに会うのに、あんなにぷくぷくしちゃって・・・
ツアー途中で痩せるだろうけど、初日はだるまさんじゃないの!と、頬をぷうっと膨らませて、自分が忙しかった事を嘆いていた。
きっと。
今回もそのつもりなのだ。
1年9ヶ月分の作り置き。
は無理だろうけれど。
「もうすぐちゃんみなが来るって分かってたから、開けといたんじゃん。開いてる方が嬉しくない?お帰りを言ってくれる人が中に居るからさ。」
首をかしげて。
肩を揺らして。
彼が笑う。
会うのは久しぶりだった。でも・・・以前のような、特に痩せた印象はなかった。
とは言え、相変わらず細い手首。
白く、光を集めるその腕に、どうしても目が行く。
捲られた袖口に沢山のアクセサリー。
その中にユノヒョンとお揃いのブレスが2つ、彼を守るかのように巻かれていた。
「ほんの少しの時間でも、誰が入って来るかわかんないんですから、もう・・・。」
「ユノが居ないのは皆知ってるから、来ないよー。」
「そういう意味じゃあ、ないんです。ファンがどうとかじゃなくて。」
僕らの周りには色んな人間がいるんだから、と言いかけて。
僕はその先を言うのをやめた。
そんなお小言を言う時間さえ、もったいない気がした。
今、出会ったばかりだというのに、僕らの別れのカウントダウンは始まっていた。
ちゃんみな 触れたら最後、日本全土がハルマゲドン
ちゃんみな 関連ツイート
犯罪では
オールちよ